現在、高志の国文学館では、公益財団法人翁久允財団の協力を得て、翁久允旧蔵資料の調査を行っています。今回は、その調査報告の一環として、翁久允と、富山歌壇に大きな影響を与えた二人の歌人―吉井勇と川田順との親交を伝える資料を紹介します。

翁久允(1888~1973)は、現在の立山町出身の小説家・ジャーナリストです。アメリカで約18年を過ごし、帰国して『週刊朝日』の編集に携わった後、昭和11年(1936)に富山で郷土誌『高志人』を創刊、生涯を通じて刊行を続けました。

吉井勇(1886~1960)と川田順(1882~1966)は、戦時中、雑誌統合により『高志人』が『高志』と改称して刊行された時期を中心に、短歌や文章を寄稿しました。その背景には、小又幸井や藻谷銀河をはじめとした富山の歌人たち、そして翁久允との交友がありました。

吉井勇は、昭和19年(1944)に初めて富山を訪れました。富山へ旅したばかりでなく、川崎順二、小谷契月らの支えを得て、昭和20年(1945)2月から8か月間、八尾に疎開しました。富山での詠草は、歌集『寒行』、『流離抄』に収められています。

川田順は、昭和10年(1935)7月、小又幸井らと立山に登り、「立山行」54首を発表し、歌集『鷲』に収めました。その後、戦前戦後を通じて小又幸井、翁久允らとの交友は続きました。

今回の展示では、期間を前後期に分け、前期は吉井勇、後期は川田順を中心とした構成とし、翁久允に宛てた書簡や、原稿、掲載誌、歌集などを展示します。あわせて、『高志人』という場を介した、富山の歌人たちとの関わりについて紹介します。

 [展示期間]

前期第1期 令和2年6月19日(金)―9月14日(月)

前期第2期 令和2年9月16日(水)―12月28日(月)

後期第1期 令和3年1月4日(月)―4月5日(月)

後期第2期 令和3年4月7日(火)―6月下旬

※上記期間ごとに展示替えを行います。

吉井勇「北陸日記」自筆原稿

吉井勇「北陸歌日記」自筆原稿